2010年03月31日

主治医選びについて(その2)

前回のコラムにて、「信頼できる獣医さんと巡り会うには、
まず信頼される飼い主であれ」との私見をご紹介しました。

今回は、私が考える「よい獣医さんの要件」をご紹介
したいと思います。

ちなみに、こちらはあくまで私個人の考えです。
よい獣医師とは、飼い主の治療に対するスタンスや
価値基準、愛犬の疾患状態、年齢等々により異なってくる
ものだと考えます。
何に重きを置くか、優先順位は人それぞれ。
Aさんとその愛犬にとってベストな獣医師が、Bさんとその
相棒にとってもベストであるとは言えない所以です。


私たち飼い主は、まず冷静に、正直に理想とする主治医像を
リストアップし、その中から「どうしてもこの要件だけは外せない!」
と強く思う項目を3〜5つ選び、それを主治医選びの最優先指標
としてまず自宅近くで(私の目安は30分以内で通院可能な距離である
こと)、近所で見つからない場合は、徐々に距離を伸ばしていく・・
主治医選びとは、地道に積み重ねの作業でははないかと考える次第です。


具体的な獣医師探しの方法については、後日ご紹介することと
しまして、今回は、「よい獣医師の要件」をご参考までに
ご紹介いたします。
(なお、清潔で掃除の行き届いている院内環境と明朗会計
(会計の明細がはっきりしていること)はごく当然の要件と
 考えますので、以下の要件には敢えて入れておりません。)


よい獣医師 10の要件


@優れた観察眼をもち、基本的な診察を毎回、確実に実践している

これも実は「当たり前のこと」といえるかもしれません。
「当たり前のことをいついかなる時も当たり前にできること」
とても大切なことだと考えます。
視診、触診、聴診、必要に応じて血液検査やレントゲン検査を行い、
体重、体温測定、呼吸数、心拍数などのチェックを欠かさない。
これは、診断治療の原則といわれています。
経験や勘を過信せず、毎回基本的な診察を確実に実施することは、
誤診や見落としのリスク軽減にも繋がります。

A飼い主の話し、要望にしっかり耳を傾け、対応している

多忙な中、飼い主の話に耳を傾け、不安、疑問、要望を受け止める
ためには、獣医師は忍耐と相手を思いやる気持ちが求められる
ことでしょう。
患者(飼い主と愛犬)、獣医師双方にとって最善な治療方法、対応策を
模索するためには、飼い主へのヒアリング、話し合いが不可欠。
そのことを理解されている獣医さんは、一方的に自分の意見・見解を
押しつけることはしないはずです。
また、愛する犬を失い、悲しみの中にある飼い主の話に耳を傾ける
ことのできる獣医師は、素晴らしいですね。

B説明能力が高い

近年、ヒト医療のみならず、動物医療においても、「インフォームド・
コンセント」の重要性が叫ばれています。
「インフォームド・コンセント」とは、直訳すれば
「十分な情報を与えられた上での合意」。

意味するところは、獣医師が十分な説明を行い、それを飼い主が理解し
納得した上で、自身と愛犬にとって最善と思われる治療方法を飼い主
「自ら」選択していくということ。

獣医学の知識の乏しい(または皆無)の私たち飼い主が、最良の判断を
下すためには、獣医師によるわかりやすい説明は不可欠です。
ただし、専門的な事柄を、飼い主の理解力にあわせ、飼い主が理解できる
言葉で説明することは決してやさしいことではないと思うのです。

現在の状況、何が原因で、どういう治療法が考えられるのか、各治療法の
メリット・デメリット、代替治療の提示と今後の予後の予想そして治療に
かかる費用の見通しなどなど...。
飼い主が自分と愛犬にとって好ましい選択を行えるよう、必要な情報を
わかりやすく伝え、疑問や質問に快く応じる姿勢を持ち続ける獣医師に、
医療従事者としての高いプロ意識を感じます。


C飼い主の教育・情報提供に積極的である

前述Bで、飼い主が理解、納得できる
ようにきちんと説明し、最良の選択をする手助けをすることは獣医師の責任
だと述べました。

一方、飼い主が獣医師の説明をしっかり理解し、納得した上で治療法を選択
できるためには飼い主サイドにも一定レベルの「素地」が必要ではないかと
思います。
勉強熱心な飼い主からの質問を歓迎し、知り得る知識・情報(動物医療に限
らず、犬種選び、しつけ、食餌、お手入れ、ケアグッズ等々)を惜しみなく
飼い主に提供してくださる獣医師は、獣医師と対等な立場で話し合うことの
できる「意識の高い飼い主」教育に大きく貢献しているといえましょう。

簡単にいえば、飼い主に一方的に責任を押しつけず、必要なアドバイスを
惜しまない獣医師といえるかもしれません。

また、治療に限らず一見ささいなことに思われる事柄についても、
「なぜ自院ではこのような対応としているのか」方針や理由をあらかじめ
説明いただけることで、万が一治療の効果が芳しくなかった場合も、飼い主
側の不信感や猜疑心を払拭または軽減し、わだかまりなく通院することが
できるように思います。



D国内外の最新の動物医療技術、知識の習得に努めている

動物医療は実に日進月歩といわれています。

動物の体に負担の少ない治療方法や、以前は完治が難しいといわれていた
症状・疾病に一定の効果のある治療方法など、患者のよりよい治療のため
寸暇を惜しんで新しい知識技術吸収に励む獣医師もけっして少なくありません。
(一方で、日々の診察業務に追われる間に、治療の幅を広げる機会を逸して
 しまう獣医さんも多いことでしょう。)

学会などを通じて知り合った他の獣医師と交流し情報交換することで、
自身の医療レベル・知識を定期的にチェック・向上させようとする意識の
高さは必ず診察の質に現れると思います。
一人では判断に苦しむ症例も、当該症例を得意とする獣医師に相談する、
もしくは紹介することができれば、新たな展望が開けることも多いです。



E臨床獣医師としての一定のキャリアを有し、かつ自身の能力を熟知している

やはり、「経験」は大きいです。

あくまで私個人のものさしですが、愛犬の主治医には最低でも15年以上の
臨床経験はほしいと考えます。
医療には不確実性がつきもの。合併症やリスクを回避しようと最大限努力
したとしても、医療事故を100%避けることはできないでしょう。
事故をどう認識し、対処するかに、少なからず経験の差が現れるように
思います。

同時に、自身の豊富な経験を過信せず、冷静に自らの能力(得意・不得意)
を見極めることができる獣医師を私は信頼します。
回答に自信のない事柄について、あいまいな答えをすることなく、調査に
時間がほしいと伝え、後日調べた内容を伝えてくださる獣医師は、飼い主の
信頼を得ることでしょう。
また、自身の手に余る症例と判断した場合は、必要に応じて専門医または
二次機関を紹介してくださる獣医師も増えています。
大変歓迎すべき傾向だと思います。


   
F夜間救急受け入れ体勢がある

愛犬が夜間突然体調を崩し、慌てふためいた経験をお持ちの方もおられる
ことでしょう。
中には胃捻転など、一刻の猶予を争う緊急事態が生じることもありえます。
そういった万が一の際、近くのかかりつけの動物病院に搬送することができ
たら、どれほど心強いかわかりません。

院長の自宅と隣接している動物病院などでは、緊急を要する場合のみ急患を
受け入れてくださるところもありますが、そういった病院は少数派かも
しれません。(スタッフの手配と準備がネックという話を耳にします)

仮に自院で夜間急患受け入れを行っていない場合は、せめて近隣の24時間
救急医療センターもしくは、夜間往診専門医を紹介するなどの心遣いがある
とよいですね。
(※余談ですが、搬送先の病院では既往歴や投薬・治療歴などの情報は把握
  できませんので、飼い主が的確に必要な情報を提供する必要があります。
  直近の検査結果や内服薬も参考までに持参することをオススメします。)

G勤務医間の情報共有・教育をはかっている

ほとんどの動物病院では、院長の他にも獣医師(多くが勤務医)がいます。
担当獣医師以外の獣医師に診察いただく場合、患者の病態をどの程度理解
しているか、院内の獣医師間で必要な情報共有や意思疎通がなされているか
治療方針に大きなばらつきがないことは大切なポイントだと思います。
獣医師間の意思疎通が十分になされていない場合は、治療の不備につながる
可能性も否めません。
院内における知識の共有度、教育度、診察方針の浸透ぶりには経営者
(院長)の意識の高さが表れると私は考えます。
また、病院スタッフが頻繁に辞めていく病院も避けたいところです。



H看護師の重要性を認識し、優秀な看護師育成に力を入れている  

病院内での動物看護師の仕事は、多岐に渡ります。
診察・手術補助、麻酔管理、薬局、検査、入院動物の観察や食餌、健康管理、
トリミングそして最近では、飼い主からのしつけや飼育相談に応じる
ことのできる動物看護師を求める動物病院も多いとききます。

動物の病気を治すための手伝いに加え、飼い主と愛犬が健康にハッピーに
暮らすためのアドバイスをすることも動物看護師の大切な仕事の一つだと
いえましょう。

飼い主との信頼関係が厚く、担当獣医師以上に飼い主と愛犬の生活を
把握している看護師が多いことも知られています。
幅広い知識を得る為に、積極的にセミナーに参加するなどして日々研鑽を
積む学習意欲とコミュニケーション能力の高い優秀な看護師を重用し、
彼らが生き生きと働く場を提供できる病院は、飼い主の満足度も高いと
私は考えています。


I安楽死を助言すべき時の明確な判断基準を有している

治癒の見込みがなく、愛犬の痛みや苦しみが続き、生活の質(QOL)の侵害
が確定的なケースでは、獣医師が飼い主に辛い助言をすることも時に必要と
なることでしょう。
(※獣医師ができるのは助言であり、安楽死を決断するのはあくまで飼い主
  のみ)

非常にセンシティブな「安楽死」の問題。
獣医師は、医療従事者として安楽死を飼い主に助言すべき明確な判断基準を
持っているべきだと考えます。



以上、長々と個人的に考える「よい獣医師」の要件をご紹介させていただき
ました。

いろいろな考えがあるかと思いますが、わずかなりともお役立て
いただけることがありましたら大変幸いです。


ニックネーム だいひょー at 22:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする